喧嘩は茶飯事、目付きも悪くて、いかにもって雰囲気からまともな奴なら進んでお友達にはなりたくはないであろう俺の隣には全く逆な存在である女、いや、同い年でありながら女の子と言った方がいいような背であり性格は虫も殺せぬとはよく言ったものでこいつはまさに地でブッタ的な生き方をしているコイツと登校している。
 それが黒沢修司の幼なじみの柊富美である。

 身長差も大分あり、端から見れば極悪非道な誘拐犯と飴に騙されたいたいけな少女にしか見えない。
 しかもさっきから話す、一方通行だけのような会話の内容も周りからの見た目通りのレベルで

「かっこよかったねぇアンパンマン」

「そうだな」

「ねぇ、シュウ君は何処が面白かった?」

 何処が面白かったか?全然面白くなかった言ったらコイツはやっぱり泣くだろうか?

「アンパンマンが殴り飛ばす所」

 何か外したか?見る間に降水確率0パーセントの快晴だった顔が午後には確実に雨になる曇り顔に変化した。

「シュウ君、もしかして昨日の見てなかったの?アンパンマンは戦わなかったよ」

 泣きそうになるんじゃねぇよ、ネットには内容まで書いてなかったんだよ

「じゃなくてカボチャマンの登場シーン」

「そういえばいつもシュウ君はアンパンマンの戦ってる所が好きだよね」

 知るか、とにかくアイツの降水確率は半分ぐらいにはなって安心したが、早くこの話題は終わってくれ!頼むから
 それは思わぬことで願いが叶った、ただし最悪な形として
 好きな会話で意気揚々と歩いていたはずの富美が何故か急に止まりだして一点をずうっと見詰めだした。
 凄く嫌な予感はした。このパターンは必ず俺を不幸にする前兆だ。
 その視線の先には三人ガキが歩いていた。
 どうやらその中の一番鈍そうなのがいじめられ役らしく、取られた風な体操着袋を追い掛けて二人の間を右往左往するが悪ガキの方が上手で、こっちに来たらもう一人にパス、あっちに行ったらもう一人にパスなんかして完全に弄んでいる。
 そんなのを見ても俺は別に怒る気もなくただやられている奴がマヌケだなと思っていたが

「君達!駄目でしょ!!」

 忘れていた。
 俺の隣にはブッタ様がいらっしゃったんだった。そのブッタ様はたかだかそこらへんの糞ガキ共のいじめにも心が傷むらしく果敢にも単身で乗り込みやがった。
 どうでもいいじゃねぇか他人なんて

「何だよ、邪魔するんじゃねぇ!」

 初めは怒鳴られたことにびびってたガキも貧弱そうな富美を見て、想像していた通り態度変えやがった。

「よったかって一人の子をいじめるなんて、いけない事だよ!」

 確かに富美の言っていることは正しいが、結局最後にはその理を通すだけの力があるかどうかで決まる。

「うるせぇこのブス!」

 顔を真っ赤にさせたガキが言えたのはそれしかなかった。
 いや、富美は決してブスじゃない、確かに背も低く童顔でとても年相応に見えないがそれでも顔もかなり整っているしなにより上流階級かのような気品の良さが漂ってブスなんて言葉はとてもじゃないが似合わない、それでもブスと言ったのはただ単にこのガキのボキャブラリーが少ないためだろうが

「シュウ君、私ってそんなに酷い顔しているのかな?」

 そんな泣きそうな顔で俺に振るなって、
 糞ガキ共もやっと俺がコイツの知り合いだと気付いたらしく、幼いながらも俺のヤバイって雰囲気を読んだんだろう。さっきまであった富美に対しての勢いはなくなり今にも発狂しそうなほどびびりまくっている。
 仕方なねぇな

「失せろ」

「はい!」

 軽くドスの効いた声を出すと我先にと体操着をほっぽりだし、いじめられていたガキすら残して逃げて行った。
 急な珍客とのやり取りをポカンッとして見ていたガキではあったが

「あ、ありがとうございました」

 俺が助けたように思ったらしく勘違いなお礼をつげて学校に向かって走って行った。だがそれをおもしろくなく見ていたのは富美で

「やっぱりシュウ君ってアンパンマンで例えとバイキンマンだよね」

「はっ?」

 せっかく助けてやったのにこのアンパンマン少女はいきなり何を言い出すんだ?

「せっかく私が説得しようとしていたのにあんな形で子供達を強迫するなんてヒドイ」

 富美が針千本見たいに膨れている、そうかつまりは

「嫉妬してるんだな、自分にはできなかったのに俺にはすんなり成功したことに」

 雷に打たれたように驚いてやがる、大口を開けている顔の上に油性マジックで顔いっぱいになんで分かったと書かれたようだ。
 昔からどんなささいなことでも自分でやり切れなきゃ嫌がるタイプで例え自分に利益にならないことでもやれるかぎりは頑張る女だったからな

「そ、そんなことはないよ、それより私をアンパンマンに例えると何の役かな」

 おい、視線が泳ぎまくっているぞ

「そうだな、お前は・・」

 お前はアンパンマンだろう

 人のためなら自分を犠牲にしてでも助けて、それが報われなくても役に立てたことに満足する、お前はやっぱりアンパンマンだな

「お前は・・・チーズかな」

 思った通り微妙な顔をしてくれる。

「何で?」

「キャンキャン吠えまくるし、結局バイキンマンに捕まっちまう」

「そんなこと言うなら、シュ
ウ君はいっつもカバオ君達をいじめる極悪人だよ、いい、あいゆう時はまず・・・」

 しまった、アンパンマンの話を終わらせるつもりが逆にアンパンマンの話を使って責められている、まいったな
富美の説教はとどまることを知らずそれは学校に着くまで続くように思えた。