2旅人の行き着く場所


 勇者学校というのは俗称であり、本当は国が名付けた国家治安維持傭兵学校という堅苦しい有り難い名前があるのだが普通は皆面倒なので勇者学校か冒険者学校と呼ばれている。
 余程の理由がない限りに誰もが一度は通う学校の目的は正式名称の通り国の治安を維持するために作られた施設であり、国の最終目標としては村や街に襲ってきた魔物や盗賊等をその村や街の市民が倒せるようにすること、そうすれば被害が広がる前に解決でき国的には全く被害がでない、その村にとっても国にとってもメリットがある。さらに治安を乱すのは魔物や盗賊だけでなく隣国に供えるための軍隊もこの学校の成績上位者で成り立つ、言わば即席の予備軍隊学校のような物である。





 学校での科目としては大きく分けると三つあり、まず戦士科がある。
 この科では多くの者が魔法を捨ててただ単純に肉弾戦での最強を目指し鍛え、戦場では常に最前線で戦いパーティー内では敵からの盾となり矛になる。文字通り戦う人を育てるのがこの戦士科である。
 授業のほとんどを闘技室での模擬戦闘や戦争を体験したことがある老兵を招いて兵法や生き残るすべを学び、稀に王国の新米指揮官の実地訓練として魔物狩りなど危険が伴う授業が多いために最も死傷者が多い科目でもあるが最前線にいるので英雄視されるなど他の科より目立つという理由で志望者も多い。





 次に錬金科、本来治安とはあまり係わり合いがないように思われるがハンターなどがダンジョンから持って帰った物を加工にして武器を作ったり、あるいは自ら探索して取ってきた薬草を調合して薬を作ったりなど、戦士科のように前線で戦うのではなく戦うための環境を作り出すのが役割である。
 授業内容としては錬金を知る所から始まり、造る過程を知り、実際に造って知る。後にも先にも知る事をメインとしている。力や技術などは他の科よりはあまり必要としないが代わりに膨大な知識量を必要とする。





 最後にルナがいる魔法科、この科だけは選抜制であり絶対条件として魔力か聖力が一定以上持っていること。
 魔法は戦士のように装備がいらない上に威力は最高、唱える時間さえあれば戦力として最強の科ではあるが、問題はほとんどの者が魔道を極めることに時間を費やすために肉弾戦としての戦闘力を期待できない、そして不味いことに魔法を唱えている間は呪文に気を使うために全くの無防備となる時間ができ加えて唱える魔法の威力によりその長さは比例するので不意打ちを喰らわない為にも基本隊列は後ろからの支援や攻撃という比較的安全な位置となる。つまり唱える時間さえなければ最弱の科でもある。しかしそれに対して一部例外があり、実力がある者は自分で精霊や使い魔と契約して壁となって守ってもらう方法もある。これはスライムなんかの下等な魔物なら比較的に契約は楽であるが盾としては役に立たない、質さえ選ばなければ珍しくないのだが、それが高等な精霊や使い魔などになると使役される方が主人を選んだりしてしまう
 この魔法科はただ魔術師を増やすだけでなくこの科で学んだ技術を生かし科学と魔道を組み合わせた魔導具を作ったり、魔法科の後戦士科で鍛えて魔法戦士になったりするなど、ある意味戦士科と錬金科との応用科のようなものでもある。
 そんな魔法科の中でルナが所属するのはプリースト学部
 プリーストを簡単に説明すると魔法科で唯一聖力を使う白魔法を中心に学び、パーティー内にはなくてはならない治療の専門家を育成する。





 そして学校というからにはもちろんのことながら秩序を保つ校則があり、未熟者を導く教師もいる
 という訳で何故か我は今その教師達に拘束されている。

「こいつで今学期の単位をください!」

 床に転がっている我を指差しながら詰め寄る我が主

「ですからプリーストのあなたが魔物と契約していいわけがありません!!」

 大層な机を挟んでルナと向き合いながら椅子に腰掛けている初老の女

「校長!問題はそこではありません!!」

 初老の女の横に立っているのは不健康そうな男

「そんなモノはさっさと追い出してしまうべきです!!」

 さっきから事あるごとに口を挟むのはその他の教師達

 お互い理由は様々ではあるがこの校長室で怒号と憤怒しているってことでは皆に共通している。
 事の発端はルナとその場で仮契約した後その足で学校まで連れていかれた時からだ。
 ルナと共に正門から入るとそこで校庭を歩いていた一人の痩せた教師と出会い、我を見るなり慌てて校舎に逃げていったと思ったら今度はぞろぞろと、その教師に率いられた二、三十人ぐらいの教師群が校舎から出てきて見事な連携プレーで第一軍が我に拘束魔法をかけて動けなくすると、第二軍が何処からか持ってきたロープなどで簀巻きにして、第三軍がその状態のまま担ぎ上げられて校長室まで運び込まれた。
そして今も我が主の横で顔だけが出た簀巻きというかなり間抜けな恰好で拘束魔法を掛け続けられている。
 その間我が主というと絶対に抵抗するなとの命令後簀巻きになるさまを大爆笑いしながら温かく見守り、我を担ぐ教師群と共に校長室に入室した。現在はかなり緊迫した様子の教師群に囲まれながら普段なら品の良さそうな老婆を真っ赤させて口論している。

「整理しましょう、確かに私達はあなたに学期末の補習として精霊などの保護かまたは観察そして運がよければ契約をせよと命じました。しかしあなたは魔王が存在していた暗黒時代の四天王の一人と契約してきた。」

「校長先生、私と同じクラスのイーシャのようにプリーストでありながら魔物と契約してる人はいます。」

 それを聞くと横から例の痩せた教師が

「危険の度合いが違うというのだ!校長!今ここでこの魔物を消去しましょう!!このように拘束できてるのですし」

 これを皮切りに周りの教師も一斉賛同し、次々と自分達の使い魔達を召喚したり武器を取り出して攻撃準備にかかり始めた。
 だが我だってみすみすやられる気もない

「キサマ達は勘違いをしてるようだが我は動けないのではなく動かないのだ。命令さえ解ければすぐにこれを食い切ってやる」

 実際のところこの拘束魔法の威力が単純に唱えてる人数分があるわけでなく、即席で作ったためか変にかけあって相殺されてる部分があり我なら簡単にとける。

「という訳です。顔だけ出ている間抜けな姿をしていますがそれだけの力はあると思います。それに言魂だけの仮契約ですが、知っての通り使い魔がやられると契約者にもなんらかの悪影響が現れますので私は例え先生方に怪我を負わせてでもロスの消去を阻止しますのでそのつもりで、後ちなみに抵抗しても勝てる自信はあります」

 つまりはテメェらの命はこのルナ様が握ってんだ、やれるもんならやってみろという意味である。
 しばらく緊張が多分に含まれた沈黙後

「ふぅ、解りました。確かにあなた達と争ってもこちらに勝ち目はないでしょう、仕方ありません、このケロベロスをあなたの使い魔として認め、あなたの補習を終了とします」

 こうして我は学校側から正式にルナの使い魔として認められた。
 ただ気になるのが教師達は我よりもルナの言葉の方に恐怖したように思えたのは気の性だろうか