6求める願い



 起きた瞬間、体は全く動かず景色は真っ白、その時は真剣に我は死んだんだと思った。ここが死後の世界なんだと
 しかし風が吹くたびに白の景色がめくり上がり黒く焼け焦げた土が見え隠れする、その時になってようやく我に起こっている状況を理解した。

「そうか、我は確かルナのライトニングを受けて気を失ってしまったのか」

 体が重いのは電撃のせいだと納得はいったが、いくら我が怖いといっても気を失っているのなら医療室に連れていってもバチは当たらないだろうにダメージはほとんどなくなってはいるが野ざらしになっていたせいで体の調子が悪い気がする。
 まぁそれはいいとしてこの白い景色なんなのだ。前足で引っ掻くとそれはいとも簡単に外れ表面の触り心地から言ってもただの紙のようだ、だがその紙には頭に来るぐらいうまい字で

「親愛なるロスへ
この紙を見たら今すぐ教室まで来なさい、地図はここに」

 確かにこの校舎内らしき地図の中に目的地と書かれた黒丸がある。伝言の代わりに我の頭に張り付けていたらしい、この地図の下には続きがあり

「そして親愛なる皆様へ
 今私はこの使い魔に罰を与えていますのでどうかそのまま放置でお願いします。
 しかしながら、それでもこの魔物を助ける場合は私、ルナ・ミスティックに逆らう行為だと思っていてください」

 なるほど、皆は親切心よりも恐怖心の方が上回ったということか





「ここがプリースト学部か、なかなかいい場所だな」

 校舎の外見から見ればもっと中は傷んでいるかと思っていたが所々修理の後はあるが大切に使われているようだ、恐らくは外見の方をわざと古いデザインにしているのだろう
 そうか、何故二回目なのに初めての様に感じがしたのは前に来た時は教師に担ぎ上げられたあの間抜けな簀巻きだったせいか

「なんでですか!私の答のどこが間違っているというですか!!」

「ですからそれではできないといってるんです!理由はそれだけです!では次の解答にいきます」

 地図の終着点である教室から聞き覚えのあるプリーストの声がする。
 あぁ我は扉の向こうの光景を安易に予想できるのは何故であろう、だが負けるな我!!いかにルナといえど人だ、あれほどに暴れた後にまたするはずがない!!何故か無意味に気合いを入れて運命の扉を開く

「なっ!私を無視するなんていい度胸ね!土の霊よ、私のためにその強固な体の一部を授けよ!ゲルド!!」

 ルナの体の周りに魔力を宿し始める。
 ゲルドは使用者の魔力を尽きるか使用を止めぬ限り身体能力を飛躍的に上げる魔法でありつまりの意味は

「教師に暴力を振るう気ですか!?わかりました、ゴーレムのレゴムよ、私の壁となりなさい!!」

 向こうでは召喚魔法を使う時に発生する特殊な魔力の感知とガシャンという陶器らしき物の割れる音と中の女子生徒らしき悲鳴と共に向こうで何かが始まるが我は扉を閉めてそれらを終わらす。
 うむ、我は何にも見てないし何にも聞いていないぞ

「皆!ルナがまた暴れだしたぞ!!女子は拘束魔法、男子は防御魔法を!!」

 我にはまったく聞こえないぞ!扉の向こうで一人相手に戦争状態になっているなんて、しかも皆何故か手慣れているなんてまったく聞こえないぞ!!

「ルナ止めるんだ!!」

「私に触るな!この隠れロリコンが!」

 バギィ!
 鈍い音ともに男子生徒が我の唯一の境界線である扉を突き破って吹っ飛んできた。その生徒は防御魔法らしき薄い白い膜のような物が覆っているので立ち上がれないほどダメージはなさそうだが

「マッシュ君で実はロリコンだったんだ」

「怖いねぇ〜」

「もうダメだ・・・」

 彼は別の意味で再起不能になった。
 扉が壊れてしまったので嫌でも中を見れば戦況は極めてルナに有利になっている、狭い教室や魔力の弱い生徒達など理由は様々だが一番の決めてはゲルドを使っているところだろう。
 ソドムのように単発の魔法だと、撃ち終わった後にはいかに魔法に卓越なルナであっても間髪いれずに次の魔法は撃てず、精霊でもない限り必ず次の呪文を唱えないといけないのでその間にスキができるが、ゲルドのように魔力が続く限り効果が持続するタイプなら次の魔法を撃つ必要がないので一対多の戦いでは有利なのだ。

「あら?そこにいるのはロスじゃない、遅かったわね」

 困った、我は一体どうするべきか
 屍のように動かない男子生徒達に既に首を振りながら手の平を見せて降参しているゴーレム、それを笑顔で殴り続ける主人になんて声を掛ければいいのだ

ジリリリ!!

 勝利のゴングとばかりに無機質な音があたりに響く、どうやらこの時間の終了ベルのようだ

「わかりました、ルナ」

 使い魔のゴーレムを引き戻し神経質そうな先生の言葉に皆が注目する。

「この時間はルナの勝利とします」

「ありがとうございます、先生」

 あれだけ暴れておいてそれだけで納得がいったらしい





「ところでルナよ、解答の話はどうなったのだ?」

「授業が終わったから関係ないわ」