7光を行使する者


 前にも言ったがプリーストとは他の攻撃魔法なんかも少しは覚えるが主に仲間の素早さを高めたりする白魔法を覚え、自分では戦わずに仲間の治療などの補助全般がプリーストの役割である。
 また傷を癒すだけの魔法以外にも、時に歌を歌たったり、詩を詠み聞かしたりなど外側だけでなく皆の心のケアなんかも担う、例えるなら聖母のような存在であってパーティーにはなくてはならない大事な役目なのであるから、気分しだいで教室を破壊するような女には全く向いてないと我は思う

「時の霊よ、私の呼び掛けに答え、ここにある物全てを元のあるべき姿に戻せ、シークル!!」

 さっきの論争でもなく、喧嘩でもなく、やはり、ルナ対クラスメイトとの戦闘と言うべき被害で破壊尽くされた教室が少しずつ時を巻き戻したように直っていく

「うん、壊した分はちゃんと直さないとね」

「普通は最初から壊さないと思うのだがな」

「また地面にはいつくばりたいの?」

「い、いや、それより我は授業中にはどこにいればいいのだ?まさかルナと一緒に授業を受ける訳にもいくまい」

「それならあそこに扉があるでしょ、あれが使い魔達の待機所になっているから」

 至る所で主らしき者と共同でシークルを使っていた使い魔達があらかた直し終えると教室の一番奥に扉に戻っていく。

「じゃちょっとシメテきなさい」

「なぜそう物騒な事を考えるのだ?」

 返事をしながら中に入ると壁には窓で隣の教室と繋がっていて、主達の生活風景をここから傍観できるようになっている。
 それに一応この部屋全体には使い魔どうし争わないようにか魔力を制限する拘束魔法がかかっているようだ。水の精霊と炎の精霊のように属性の全く違う者が同じ部屋にいるとしばしば争いが起こりやすいものだが争いを起こすための力を奪っておこうという考えらしい
 しかしまぁ、ルナよ、安心しろシメる必要もない、周りの精霊は恐れをなして我を中心に円が出来ている。
 我が一歩進むごとに周りが波のように引いていき誰も近づいたりはしないと思っていたが

「お久しぶりです!!」

 そのサークルを突き破り緑色の髪をした、人間の手の平に乗るオードソックスな極小サイズの妖精らしき者が我の鼻先に乗ってきた。

「誰だ、オヌシ?」

「忘れたのですか?人食花に襲われていた私を一撃で助けて下さったじゃないですか」

「そうだったか?」

「えぇ、今から三年ほど前のガルゴダ平原」

 そういえば思い出すと我はこいつに会ったことがある、まだ旅をしていた時に腹が減ったので食べ物を探していたら、ちょうどそこに人食花を見つけたので細切れにして食べた時にいたニンフだったはず。

「ということは、プリーストでの唯一の魔物とはお前の事だったのか。」

「はい!じゃ改めて自己紹介をします、私はニンフ、つまりは妖精みたいな物ですがフェアリーとは違い精霊ではないです、今はイーシャと契約して名前をシフォンと名乗っています!それで、えっと、できればどうかあの時助けてもらったお礼をさせて下さい!」

 まくし立てて紹介をされたが我にはその意思はなかったことだし

「助けようと思った訳ではない、たまたまそういう結果になっただけだ」

 あの時もそう断ったがしかしシフォンは頑として引かずに

「例えそうであったとしても助けてもらったのは事実です!!」

「わかったから、頼むから我の目の前で叫ばないでくれ」

「すいません」

 我の鼻先で萎れられるとこちらがものすごくいじめたようで気分が悪い

「そうだな、ではこの学校の事を話してくれ我は初めてなのだ」

 萎れていたのが演技で我の言葉を待っていたかのようにすぐに元気になり

「はい!この学校は伝統を重んじていて見てわかるようにこの校舎も勇者学校が始まった時に流行していたデザインを取り入れているんですよ、それともう一つの自慢はもう会ったと思いますけどあの五大勇者の一人、プリーストのセルフィさんが校長でいることで有名な学校なんです。」

「何!?」

 その名を聞くだけで吐き気がする、あの五人がまだ生きている?仲間を何人も倒し、我らの魔王を刺した。あの五人が

「確か風の噂で全員死んだと聞いたが」

「いえ、それは魔物の報復を避けるために人間達が流した噂だと思います、ただあの時のバトルマスターだった人は亡くなったと聞きました。」

「シフォンは憎くはないか?我らの魔王を刺したあの五人を」

 少し気持ち的に強制するように言ってしまったのかシフォンはびくつきながらでもはっきりと

「正直に言うとわかりません、でもセルフィさんだけが悪いとは思えません」

「そうか、変な事を聞いてすまなかったな、そういえばシフォンは自らを封印しなかったのか?」

 羽を羽ばたかせばかんばかりの勢いで話してたシフォンが急に手で顔を隠して、照れながら

「私は自分にかけるための化石の魔法を知らなくて、封印といえば、近頃あの魔界の決定を聞かずに暴れてる魔物もいると聞きます、それに今まで封印されていた魔物達も何か動きが・・」

「あら〜、シフォン、もうロスさんと友達になったの?」

 シフォンの話を肝心の部分で、良く言えば育ちの良さそうな悪く言えばワンテンポ遅れてそうな女に話し掛けられた。

「紹介します!こちらが私の主のイーシャです!」

 何がそんなにうれしいのか遂にシフォンは羽をばたつかせ我の周りを飛び回り始めた。

「我はルナの使い魔のロスだ、よろしくお願いする」

「よろしく〜、そういえばルナさんが呼んでましたよ〜」

「わかった、今行くと伝えてくれ、でシフォンよ、封印されている魔物がどうした?」

「あ〜でもすぐに来ないなら〜ルナさんが強制召喚も〜」

 我はイーシャの言葉を最後まで聞けずに、存在がぶれて景色が変わる。

「ルナ、隣にいるのだから少しは待たぬか、話の途中であったし、強制召喚とて多少は魔力を使うというのに」

「遅いあんたが悪いのよ」

 少しであっても待てぬ主である。

「後で言いたい事があるがそこまで性急になんの用だ?」

「実は次の授業のパートナーになって欲しいの」

 なるほど、黒板には使い魔が怪我や毒を受けた時の対処法など書いてあり、使い魔がいない人には人用の救命処置法なんかも書かれている。

「なんだ、そんな事か、我はルナの使い魔なのだから気遣いは無用だ」

「よし!私は許可を取ったから!光の霊よ、この者の邪気を拭いたまえ!!ヒール」

「待て、なんだ?その許可とか・・」

 ルナが放ったものは白魔法であるにも拘わらず黒きオーラが我を包み込み、体力だけを奪って消えた。

「ぐっなんだこの力が抜ける感覚は!!」

「えっ!失敗?じゃ光の霊よ、彼の者に巣くう悪の根源を払いたまえ!!コーポア!」

 今度は解毒の魔法をかけられたというのに毒状態のよう体を蝕む。

「我が悪かった、何を怒っているのは知らぬが今までのことは謝るから、頼む、もうやめてくれ、まだ死にたくないのだ」

 実際かなりヤバイ、瀕死の状態で毒をかけられると死にそうだ。百年以上と生きてきた我だが人生二度目の瀕死に陥っている。

「大丈夫よ!次の魔法には絶対の自信があるから!」

 ぐわっ今度は我の体に青紫色の斑点がぁ!

「ちっ!まだまだ!光の霊よ!!」

「もうやめてくれぇ!!」





「そういえば〜ルナさんって回復魔法はとっても苦手だったんですよね〜」

「ごめんなさい、私何でもすると言いましたが回復魔法を使うルナさんだけは誰にも止められません」